戸目子のブログ

大人になった娘が読むことを想定して書く、日常や過去の覚書き

「答え」をもった人の演奏

 

日本での音大時代、同じ門下の先輩で、むちゃくちゃインスパイアリングな演奏をする人がいました。

彼女はよく「わたしは才能もテクニックもなくて」と言っていて、実際に指はよく回ってなかったんだけど、戸目子は彼女の演奏を聴くがために演奏会やら門下の弾き合い会に参加していたと言ってもいいくらい、その演奏を楽しみにしていました。

 

いつも「自分は下手くそ」と堂々と表明していた彼女は、親子揃って大の音楽ファンでした。
どういう経緯かけっこう人脈もあり、たまに小規模な演奏会の企画や開催も手がけていて、戸目子を何度か演奏に呼んでくれたりしました。
演奏するたびに必ず論評をくれるのだけど、それがけっこう的を得たものや意表を突くものが多く、彼女のどこか教祖様のような見た目も相まって「この人やっぱり変」と妙に怪しむ戸目子でした。
彼女がどんな生き方をしてきたのか知らないけれど、とりあえず「人の演奏を聴く力」もずば抜けていました。

他人の演奏からこれだけのものが見えているのに、自分の演奏に満足できないってのはさぞかし大きなフラストレーションじゃないかなと思っていたけど、本人はそこに関してはけっこうあっけらかんとしていて、それもまたミステリーだった。
ひとつ心残りなのは、彼女の演奏で得た感動を本人に伝えきれずに時が経ってしまったこと。

 

彼女が卒業してから先は連絡が途絶えたけど、たまに思い出しては、どこかで演奏家とか音楽評論家として活躍していてほしいなぁと願わずにいられません。

 

 

一口にインスパイアリングな演奏といっても様々だけど、彼女のそれは、聴いてるこちらにアイディアが噴水のように沸き上がってくるやつでした。
実際に音として伝わってこなくても、「あなたはこう弾こうとしてるのか!」「わかる、おぉ~わかるよォ!!」という感動、といえば伝わるだろうか。
それは、こう弾くといいよと教えられて出来たようなものではなく、誰に言われようが言われまいが漏れ出てくる感性のようなものだ。

だから、当時の戸目子の選曲は人知れず彼女のレパトアを追っていました。 Ψ(`∀´)Ψケケ
それくらい、聴くたびにその曲の真髄とか触れたことのない感性とかを体験させてくれるような演奏だったのです。

 

能力やテクニックのすごい演奏家はゴマンと存在するけど、これほど豊かな「中身」を、聴く側にふんだんにお裾分けしてくれるような演奏家はかなりレアです。
縦横無尽に聴衆を圧倒するようなアーティストと同じくらい、彼女のような「一見すると見えない(聴こえない)」けれど、その奥に存在する豊かな音楽性で人をインスパイアするようなアーティストが、もっともっと評価される世の中であってほしいと思う。

ものの価値というのはもっと多様であるはずで、権威づけのために定義されたような才能に特権を与えすぎている風潮に、ストップをかけるべきだと思います。

 

 

日本の音大時代、周りには「優等生」がたくさんいました。
優等生、すなわち「正解を求め努力に励む人」。

常に、なにが正解なのかを外に求めて模索する。
指導の中にそれを見つけながら、自分の演奏を形作っていく。
本質がよくわからなくても、とりあえず「一音入魂」と受験勉強のように頑張ってみる。それでも土台がある人はそれなりの完成度になるし、高評価される。
上に従うことが基本スタンスである日本では、ついた先生が生徒の音楽的成長の大部分を左右してしまう。

そういった優等生モデルは、裏を返せば「自分の中に答え(意味)を見出せない」ということかもしれない。

音楽に限らないけど、自分のやっていることで、もしも自分の中から湧き上がり続ける「意味」なるものが見出せないなら、一生周りに「答え」を求めて生きることになるよ。
それは真面目で着実な生き方だけど、それだけではけっこうしんどいと思うよ。

その先輩の音楽は、当時の戸目子の感性と相まって、そんなことを語りかけてくるようでした。

 

 

 

 

 

その日メモ :

本日、一人カフェ解禁。
といってもまだ緊急事態宣言下。ただの自己決定。

日本人の中にも一部、ワクチンを受けにちらほらアメリカに渡っているとか。
現地ではそこらのドラッグストアとかで接種をやっていて、フラッといってポンと打ってもらえるらしい。羨ましい。

 

1か月前、第4波の到来でカフェが怖くなった戸目子は、なんとか家(ベッド)に帰らずに半日を過ごせないだろうかとじっくり思案した末、こちらを購入。↓

 

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屋根付きアウトドアチェア!

コレを持って、色んな公園で半日を過ごす算段をつけた。
気が向けばエクササイズもできて、犬も見れるし夫も来れるし、完璧。


しばしのお供にはこの2冊↓
それぞれ邦訳版・英語版を購入。
夫婦で同じ本を同時進行で読むというファビュラスな計画。

『三つ編み』舞台はインド・イタリア・カナダ。

 

ずっと読みたかった『パチンコ』ついに。
表紙も美しい!



とここまで準備したのに、まだ一度も実行されず。

 

ちなみにこのチェア、収納時でも長さが1mあるため、自転車に積むのが大変。

現在、家で猫が使ってる。