戸目子のブログ

大人になった娘が読むことを想定して書く、日常や過去の覚書き

知との遭遇 ②【政治とBくん】

 

22歳の秋、東欧の地で出会った日本人のBくんは、戸目子と同じ時期にその国で暮らし始め、現地で音楽学の博士を目指す、まじめな印象の青年だった。
彼は、戸目子の偏屈偏狭な世界観に柔らかなアプローチをかけてくれた人で、現在の自分も尚その延長線上にいるのだなと定期的に実感しています。
(国名を記載するとけっこう簡単に身バレするほど日本人が少ないので、東欧と表記)

 

先日、この記事↓を読んで色々と思うことがあった。

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※記事内より / 一番上の黄色枠が日本人

 

戸目子がいた海外の国々では、若者含め周りの多くの人が政治や宗教の話を活発にしていた。
(て書いたあと今速報ニュース読んでたら、懐かしのトランプのお言葉『米女子サッカー代表が五輪で金メダル取れなかったのは、左翼マニアな選手の社会意識が高すぎたせい』やと😂 まだそうとう恨んでるね。)

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大統領時代のトランプをメッタメタに批判してきた
女子サッカーチーム主将ミーガン・ラピノ選手

 

若者が政治に強い関心を寄せるようになったのは、世界的にみても比較的新しい風潮ではあった。
そこでは、政治が、じいさんのじいさんによるじいさんのためのものでないことだけは確かだった。

生活の中でふつうに遭遇するストやデモもだけど、忘れられないのは、東欧の街でヒャラヒャラ遊んでたある夜。
突然目の前で車とゴミ箱が燃えはじめたと思ったらバーンバーンと鳴り響く爆音とともに大規模なデモが始まってヒーヒー言いながら逃げ回ったことがあった。(それまで耳にしたことない、男たちのリアル叫び声の恐怖ったら!ないよ)

ストはまじ勘弁だったし大規模デモは危険だし、是非は置いといて、だから上の記事にある調査結果は体感としてものすごく納得できるものだった。
「日本人は平和ボケしてるから」「礼儀正しいから」ではない。
民主国として機能してないからだと思う。


政治と歴史

2006年、いつものレストランで肉を美味しくほおばる戸目子の前で、デンマーク人男性と日系アメリカ人女性が大激論を展開させた。

それは、"The Rape of Nanking" という、旧日本軍によるあの悪名高き「南京大虐殺」を書いた本の著者である、中国系アメリカ人のアイリス・チャンが、2004年に自殺した話から始まった。
この本は出版後全米で大ベストセラーになり、それを機に日本批判が湧き出たのか(知らないが)、そのデンマークの男性もすっかり中国側擁護モードになっており、日本は謝罪すべきだと繰り返し言っていた。
対する日系アメリカ人女性は、アイリス・チャンは中国政府に利用された作家で、この本は偽造捏造だらけのプロパガンダ本であり、それがチャンの自殺にも関係していると主張した。

まず、日本の歴史などほとんど知らない世界の人たちが、こういった強烈なベストセラー本にガチ影響されるという現実がもう、絶望感ハンパない。
(「アメリカが日本に原爆落としたのは、大戦を終結させるためだったんでしょ?」と聞かれたことも一度や二度ではない。)
そして、(ドイツ以外)世界の国々が、一体どれだけ過去の加害行為を包み隠さず自国民に教育しているのか。とりあえず戸目子自身の無知さだけをみても、日本が犯してきた侵略・虐殺・占領支配の過去を、"罪" としてストレートに教育された記憶がない/教育現場で当たり前に議論されてこなかったという現実にも失望する。
タイプ別縄文土器とかヒトラーよりソレ先に知らせてよ、と思った。

そして、この世には確実に不毛な議論というのがあるんだな、と痛感した。
この二人には、生産的な議論の際に必要な「お互いが共有できる事実」すら見出せなかったので、議論はやがて口論となり、最後はその女性がバンっと机を叩いて立ち上がり去っていった。

 

ところで、ある国が過去/現在何をしたかしなかったかの問題で必ずゴキのように現れては、関係のない個人(その国民など)を糾弾するという行為は差別であると、今はわかる。
その男性は、彼女を個人的に糾弾したわけではないけど、もし(細かな真偽の程は別として)説明を尽くした女性側が日系でなかったら、彼は同じように一貫して日本を非難しただろうか?日本に全くルーツのない第三者的立場の人が相手であれば、もう少し冷静に話を聞いたのではと思えてならない。

どの差別問題にもある『当事者が、当事者であるがゆえに声を上げることの難しさ』よ。
で、それゆえの、当事者以外の人たちが何も言わずに傍観することのむごさ。
戸目子は当事者でもあったのに、無知ゆえに、何の役にも立てなかったことを今でも恥じています。。

 

余談だが、日本に「日本スゴイ」合唱の右翼組がやけに目立ってきた'00年代というのは、こういう流れも影響したのかな?
帰国するたびに目や耳に飛び込んできた「素晴らしき日本」宣伝、とくに「外国人がこんなに憧れる日本」みたいな定番のやつ、リアル外国人との乖離が激しすぎて痛かった。
日本オタクたちの愛は別格として、良くてオリエンタリズムにまみれた興味関心レベルなのに。
まあ、それで(が)良いのかも知れないけど。

 

Bくんとは、週一くらいのペースでご飯を食べに行く仲でした。
ほぼ毎回、中華レストランで戸目子はチャーハンを注文し、酢瓶が空になるまでどぼどぼかけながら食べていた。
ときには場所を変えながら、いつも真夜中まで何時間も話した。

最初の頃は、音楽とか犯罪とか日本文化とか軽めの話をよくしていたが、ある日ふと、戸目子がこの口論立ち会い事件のことをさりげなく話したのをきっかけに、会って話す内容が政治・歴史・宗教に特化されていった。
そういえば、海外からも日本の選挙投票ができるからするように教えてくれたのも彼だ。
今は渡航前に日本国内で手続きができるようになったらしいけど。

Bくんは、こと政治や歴史に関して博識だったから、そしてその語り口や会話のやりとりが面白かったので、いつもものすごーく楽しかった。
その興奮は、戸目子にとって、新しい知との出会いでした。

 

 

(長くなったので、次回に続く)

 

 

 

 

メモ :

7月始め、ワクチンの接種券に記載してあったコールセンターに、予約開始日から毎日電話をかけ続けたが、「混み合っています」と一度も繋がらない上に、いつしか「予約終了しました」のアナウンスに切り替えられた。

早速ワクチン不足が囁かれはじめていたし、成功率100%でないと知るや すぐにやる気を失う癖のある戸目子に、がんばれ!ドントギブアップ!!と、(不幸にも戸目子に頼るしかない) 夫に隣で発破をかけられながら個人病院に電話し続けて15件目くらい、予約取れた!!!

 

ありがたやぁぁ~🙏
(てか最初から直接個人病院にかければ良かったの?)

ひとまず一回目を打って2週間が経った。
もうすぐ2回目。

その後も感染はするし人に移す危険もあるので、まだまだ気は抜けないけど....

一年半の自粛生活がやっと少し報われる!!